【リアルマネートレード(RMT)】

(2006.3.11筆)
  以前にオンラインゲームについて取り上げていますが、今回はオンラインゲームと現実経済活動に関係するリアルマネートレード(Real Money Trade)を取り上げます。
 インターネットを利用したオンラインゲーム、特にMMO(多人数参加型)と呼ばれるものでは何万人何十万人というプレイヤーが世界中から参加することができます。その仮想空間内では、経済活動を行うことができ、プレイヤーは様々な手段でゲーム内の通貨(仮想通貨)を得て、またこれを消費しています。
 この仮想通貨を現実のお金(リアルマネー)で取引する行為をリアルマネートレード(RMT)と言います。
例えば、ゲーム内にある珍しいアイテムをネットオークションなどで他人に販売する行為があります。また、ゲームをする時間がない人が、仮想通貨をまとめて得るための手段としても利用されていました。
 そこまでなら単にゲームを手軽に楽しむための出費であったでしょう。
 昨今の問題は大きくあげて3つあります。仮想通貨のインフレ、業者による仮想通貨やアイテムの独占、国家間の金銭移動です。

【1.ゲーム世界のインフレ】
ゲームないでインフレが発生すると新規プレイヤーのようにお金を持たないプレイヤーはゲームを楽しむことが困難になります。
また、この原因の多くは次のゲーム内の独占行為にあって、ゲームを楽しめないとなるとプレイヤーの退去が進み、サービス停止という事業面への影響も発生します。
インフレそのものは仮想通貨が大量にあふれることで発生します。多くのオンラインゲームは時間が経過するほどインフレが進む傾向にありますが、RMTによって普段持たないはずの通貨を持ったプレイヤーが高額なアイテムをより高値で購入するためにインフレが加速する事態が発生することがあるのです。

【2.業者による独占行為】
様々な違反行為が発生し、ゲーム内のモラルが低下します。通常、仮想通貨はゲーム内の行為によって発生します。RPG(ロールプレイングゲーム)であれば、敵を倒したりクエストやイベントを達成することで通貨やアイテムを得ることが目的です。
しかし、一般プレイヤーの目的を阻害する行為が独占行為なのです。
例えば、プログラムツールを使った違反行為によって、自動的に敵を倒したり商品の売買を行うことができるのです。これにより他のプレイヤーが競い合う要素を独占的に取り上げてしまいます。
そのような独占行為者を業者などと呼びます。これら業者の目的はただ通貨やアイテムを独占することではなく、それらをRMTによって現実のお金に換えて利益を上げることなのです。

【3.不透明な通貨取引】
あまり指摘されることがありませんが、仮想通貨を仲介することで国家間の通貨交換が行われています。
業者の中にはサービス地域ではなく、本来サービスを提供していない国であり、物価の安い地域の人がより手軽な利益活動として組織的に行っています。そのため他のプレイヤーには非常に攻撃的で、言葉も通じないことで、ハラスメント行為に発展することもあります。
また、マネーロンダリングとも言える行為が簡単に行えます。A国でリアルマネーを仮想通貨に交換し、それをB国でリアルマネーに交換すれば良いのです。ゲーム内で通貨やアイテムを受け渡す行為が可能な限り、RMTと組み合わさって行われることになります。
また、ゲーム内では詐欺的行為を行っても現実に罰せられることがないため、仮想通貨やアイテムを他人から拝借し、これをRMTでリアルマネーにしたとしても違法行為にはならないのです。もちろん、ゲームの運営会社は規約違反としてアカウント(参加資格)を剥奪しますが、また別のアカウントを利用して違反行為を繰り返す人もいます。
また、ゲーム内でも通貨やアイテムの貸し借り、売買という行為は通常認められており、それら経済活動もゲームの一環と考えられているため、詐欺行為やRMTを取り締まることは簡単ではありません。

 では、なぜこのようなことが現実の法律で対応できないのでしょうか。
実はゲーム内の通貨やアイテムは運営会社の所有物であり、プレイヤーはそれらを借りて遊んでいるという考え方があるからです。
また、RMTに関してもゲームによっては禁止行為なのですが、運営会社が公認しているケースもあります。
RMTを禁止としているゲームでは、スクエアエニックスのファイナルファンタジーXI(http://www.playonline.com/ff11/)があります。しかし、同じ運営会社が行っているエバークエスト2(http://www.playonline.com/eq2/)では詐欺行為を防止するため公式にRMTをサポートまでしています。RMTによる経済活動を目的としたゲームや、ゲーム内のアイテムを運営会社から買ったり借りたりするものもあります。
ゲーム内のアイテムを持ち主に無断で販売して逮捕されるというケースもありますが、これらは不正アクセス防止法によるもので、詐欺や窃盗ではありません。他人のIDを使ってアクセスし、アイテムを奪うといううちの、アクセス部分だけが犯罪となっているのです。
そのため奪われた通貨やアイテムに対する補償は運営会社でさえ行わないのが通常です。プレイヤーからするとそれによって費やした時間を奪われたのと同じですから、精神的な被害は少なくありません。その点については、まだ現法律では対応がなされていません。

 オンラインゲームに限らず、多くの人が集まるということはハラスメントや詐欺という行為も発生しやすいことになります。
またゲームの場合、参加者の多くが若年者が中心で違法行為の標的になりやすいということもあります。また、昨今はオンラインゲームの裾野が広がっており、ゲームの種類は違いますが中年層にもオンラインゲームが浸透してきています。
運営会社は不正行為を取り締まるためにゲームマスター(GM)という、仮想世界の監視やプレイヤー間の問題解決を行う仕組みを用意しています。しかし、プレイヤーにとってそれらが満足に機能しているゲームがどれだけあるかは不明です。
最近は、国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp/)にも、ハラスメントや独占行為を運営会社が取り締まらないためにサービスを満足に受けることができないという相談が増えています。
まだまだ、オンラインゲーム市場そのものが発展的な時期でもありますが、RMTはこれから大きな問題となってくることでしょう。オンラインなのですから、一国の社会問題という枠にはとどまらず、もっと大きな視野で考えるべき問題なのですから、早急に法的な整備や国家間の取り扱いについて議論をして欲しいところです。


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