【私生活を覗くウイルス】

(2004.8.29筆)
 2004年8月23日、ソフォスが新種のウイルス「W32/Rbot-GR」について報告しました。
 このウイルスは感染したPCに接続されたビデオ映像やマイクを支配します。その他にバックドア(セキュリティのないアクセス口)を仕掛けたり、キー操作を記録するスパイ活動なども行います。これにより、感染したPC内部の情報が漏れるだけでなく、外部からビデオや音声をつかったスパイ行為が可能になるというのです。
 もっと単純に言えば、ウイルスがカメラとマイクの電源を入れ、感染したPCを経由して映像と音声を放送してしまうということです。そして、PCの中から持ち主の個人情報の全てを持ち去ることだってできるのです。あなたの私生活がインターネットを通じて覗かれるということが起こりえるのです。

 ウイルスがPCに感染する以上、PCに接続された機器が支配されることは目に見えています。それがハッキリとした形になっただけです。更に、ネットワークにはPC以外のものが色々と接続されるようになってきました。プリンタ、ネットワーク対応のHDD、監視カメラ、HDD内蔵ビデオなど、家電製品の多くがネットワークに接続されるようになります。例え直接それらの製品にウイルスが感染しなくても、接続されたPCが感染することにより他のネットワーク機器が直接的に危機にさらされるようになってしまいます。
 携帯電話でさえ、ネットに接続してメールを送ったり、カメラで撮影したり、TV電話になったり、電子マネーによる決済ができるようになってきました。プログラムが動かせるようになって色々なことができるようになりましたが、携帯電話に感染するウイルスまで登場してます。

 便利な道具は、誰にでも簡単に使えるようになると、犯罪にも簡単に使えるようになります。更に多機能になると、使わない機能や使えない機能が増えてしまい、そこからセキュリティが疎かになってしまいます。いずれはいらない機能を削減できないと、手に余るものになるでしょう。
 今後はプライバシーを保つことは非常に難しくなるかも知れません。すでに街には監視カメラが溢れており、多くの人がデジカメやカメラ付き携帯を持って歩いています。すでに監視社会と囁かれいます。
 ウイルスの侵入により家の中も、使っている電化製品も監視される危険性がこれから増えてくることになりそうです。

 余談になりますが、極小のICチップを使ったICタグを商品に埋め込むことにより、電波を使い離れたところから商品(ICチップ)の情報を得ることができるという技術です。衣料品や野菜の流通を監理するのに使われようとしています。今後はお札や書籍などにも利用されるでしょう。あなたが、どこのどんな服を着て、財布の中にいくらお金を持っていて、買い物した袋の中に入ったものまで読取装置で分かってしまうのです。
  見えないもの、見せたくないものまでもICタグの技術によって見えてしまうという、監視社会を超えたプライバシーのない世界が先に見えようとしています。


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